第9回対談

( 綱脇 )本日はフィンランドタンペレ大学ヘルスサイエンスの客員研究員で、ジェロントロジー(老年学)を専門とし、今はアメリカに在住してらっしゃる増地 矢恵子さんにお話しを伺いたいと思います。貴重なお時間ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

( 増地 )よろしくお願いいたします。

( 綱脇 )微生物の研究をされていると伺っていたのですが、今のジェントロジーとはどういった関わりがあったのでしょうか?

( 増地 )以前は東京大学先端科学技術研究センターで働いたのです、人動かし、働いていくことに疲れが出てきて、それから半年くらいハリウッドの精神分析学者の元に2週に一度くらい尋ねて2時間ほど話をしていました。

( 綱脇 )アメリカではカウンセラーの存在は広く知られている存在なのでしょうか。

( 増地 )そうですね。日本でも最近では心療内科などもできてきましたよね。ですのでそういった心療内科も一般的になってきているのではないでしょうか。

アメリカで心療内科に通っているうちに心と脳どういう風になっていくのか興味がわいてきたんです。初めは脳の機能や可塑性があるかどうか、脳は一度ダメになったら終わりじゃないかと思っていたのですが、もしかしたら何かの変化で良くすることもできるんではないか。そういう風に考えていてそれがきっかけでした。

( 綱脇 )ご自身の体験から今されていることへの興味をもたれたのですね。

( 増地 )初めのほうは老人ホームを回ってみてシニアの方とお話しを聞いてみると、もっと生きやすいシステムがあればそういった声聞いて改めて勉強しようとカルフォルニア大学でジェントロジー学(老年学)を学びました。そこでたまたま日本人で学部人が勉強しながらでもいいから何か一緒に仕事しませんかと誘われて、自分も教えたりしていました。

( 綱脇 )それからどういう風にまた微生物の関わりに繋がっていくのでしょうか。

( 増地 )脳のファンクションを遺伝的に何かできないか色々論文を読んでいたら、脳のファンクションをコントロールしているのは、腸内細菌だという論文がちょうど出てきたんです。それで私は元々嫌気性球菌が主の微生物学者でしたし、腸内細菌も嫌気性球菌なのでそれからまた微生物研究に深入りしてきたんです。

( 綱脇 )初めにしていたことが、まわりまわって今学んでいることに結びつくのは凄いですね。

( 増地 )考えてみれば、元々学生の頃も坂口健一郎という先生で日本の微生物研究の草分けの方で「酒の博士」として有名な方です。その先生の研究室の出身で発酵や醸造に関する研究もしていたんです。代々そこで毎日4時のお茶の時間に、ワインや日本酒等を同定をして、そこでお酒に慣れた記憶があります。

( 綱脇 )お酒好きなのでうらやましいですね。

( 増地 )ワインや日本酒にも微生物が関わっていたので、そこが出発地点ですね。今ほんとに回りまわってきた感覚ですね。 

( 綱脇 )以前出されていた本を読ませていただきました。

( 増地 )私が今回日本に来た目的の1つは、あの本があれではだめだと思ったことでもあるんです。まだ伝えたいこともあるので今書き直している最中で、もっと皆様にも理解していただけるように工夫してます。

( 綱脇 )結構専門的で内容も難しい印象でしたがすごく勉強になりました。

( 増地 )それだとだめだと思ったんです。もっと一般的にわかりやすく手に取っていただけるようにと考えてます。それを何とか完成させたいと思って日本に来ました。

( 綱脇 )今、注目している腸内細菌とかはありますか。もちろんバランスは大事だと思いますが。

( 増地 )やはり、善玉、日和見、悪玉菌といった菌のバランスはすごく大事だと思います。中には酪酸菌のように短鎖脂肪酸を作ることで腸内環境を整える菌は大事だと思います。

腸内環境が肝臓や腎臓・脳に至るまで色々な効果を与えることが段々分かってきていますのでそう意味での重要な腸内細菌っていうのはいくつか存在すると思います。

嫌気性球菌は培養・育てるのが難しいんです。微生物や菌は顕微鏡でみて、培養して色んな薬をつけてみて効果を研究していたんです。今は遺伝子解析が進んで培養しないで持っている遺伝子がどういった酵素活性に関わる微生物・菌なのかが解るようになって、どういう病気に関わるかというのも解るようになってきたのでそれが本当に素晴らしい事だと思いますね。

( 綱脇 )微生物研究もそんなに進歩しているんですね。どういう微生物多いとどういう病気にかかりやすいとかが解るのはいいですね。

( 増地 )テクノロジーの進歩は凄いですよね。

( 綱脇 )今回のアッカーマンシアムシニフィラについてはどうですか。

( 増地 )アッカーマンシアムシニフィラは腸壁のムチンを食べてそれで薄くなるということで厚くなるといわれていますね。アルツハイマー・認知症やパーキンソン病などの予防効果として期待はされています。

海外ではパーキンソン患者の腸内環境を調べると一定数アッカーマンシアムシニフィラ菌が存在したという結果があったりもするのでまだ未解明なところもありますね。ただ日本人の腸内にはアッカーマンシアムシニフィラ菌の保有率は少ないといわれていますね。生きる環境の違いや食生活などでも腸内細菌の種類や数に変動があると思います。その国の方特有の保有する菌などもあったりします。長年の食文化の影響が深いと思います。

アイルランドでは国民の腸内細菌を調べるというのを長年やってるですがそうするとやはり特有のパターンがあって、気候の寒さや食生活の違いで日本人とは全くパターンが違うんです。

これからアジア・東南アジア・アフリカの方の腸内細菌を調べるプロジェクトが注目されています。いまだにアフリカでは原住民に使い食文化の方もいれば、ヨーロッパに近い食文化で育っている方もいます。ですからそういう同じ人種でも食事の違う方の腸内細菌の違いなども今後が面白いかもしれないですね。

最近、伺った講演の影響かも知れないですが、健康診断などの検便でその方の腸内細菌叢のコンディションを確認できるような仕組みがあってもいいかもしれないですね。

( 綱脇 )それは凄くいいですね。今後の細かく食事意識が保てて。その取り組みはあったらうれしいですね。では本日はお時間の都合上ここまでにさせて頂きます。ご貴重な時間ありがとうございました。

( 増地 )こちらこそありがとうございました。

増地 矢恵子 氏
フィンランドタンペレ大学ヘルスサイエンスの客員研究員
ジェロントロジー(老齢学)専門
元NASA研究員 極限微生物研究 
有人潜水調査船「しんかい6500」最深部到達女性記録保持者

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